平成23年10月7日付福島民友特集「福島原発・災害連鎖 3.11から 霧の中の賠償④」に、福島県内の観光業の現状と損害賠償請求の状況について書かれている。
その中に、「風評被害(これが損害賠償対象となる被害)以外の被害額として、阪神淡路大震災の被害状況を参考に20%を減額計算する」、算定基準が示されている事が書かれている。
これに関する問題点を整理しておきたい。
1 観光業とは何か
そもそも日本標準産業分類において「観光業」という分類はなく(大分類の「運輸業、郵便業」・「卸売業、小売業」・「宿泊業、飲食サービス業」に横断的に分類されている。)、損害賠償の申請計算区分(11区分)の一つとして作られたものである。
2 観光業の分類は誰が決めるのか?
観光ホテルのような業態は別にして、ホテルでも週末は観光客主体だが平日はビジネス客を主体とする業態もある。
申請書では、観光業については「自己申告」で行うことになっており、判断に迷うケースも出てくると思われる。
3 20%の計算根拠は何か?
説明資料では、阪神淡路大震災の後の一定期間の減収率を参考にして算定した事が述べられているが、果たして異なる状況下で用いることができるかどうかは疑問がある。
4 他の区分での減額割合はどうなのか?
入手している範囲では、一般のサービス業等の場合の減額率は「3%」となっている(計算根拠については未確認。)。したがって、完全な観光業として自他ともに認める会社・事業者以外は、こちらの申請をした方が有利になることになる。
風評被害による賠償請求の申請書は、東京電力が発送先のチェックのために用紙申請をして、該当区分のものだけを入手するようになっている。
しかし、上記のように、どの区分で申請するかによって請求額に大きな差が出る可能性があり、他の区分の請求内容を知らない請求者自身には違いが分かり難くなっている。
また、観光業のように、明らかに「ためにする」区分を設けて、一方的に理論武装する姿勢にも問題はあると考える。
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